これほどストーリーに富んだビジネス書があるだろうか?
僕はこの本を読み終えた時に一冊のすばらしい小説を読み終えた時のような多幸感と脱力感に襲われました。
この一冊にはそれだけ深い物語と、チームを作るために非常に重要な知恵が詰め込まれているわけです。リーダー学はアメリカ海軍から学ぶ。新しい形のビジネス書ですね。
少しアメリカナイズな部分が入っていることは否めませんが、面白い一冊ですよ。
少しだけ前置きを
この本は著者が「海軍で一番下のダメ軍艦」とレッテルを貼られていた艦に新任の艦長として乗り込み、同じスタッフ構成のままでありながら、短期間で「全米一」と評価されるほど優秀な艦に立て直した方法が語られています。
読み進めていくうちにわかるんですが、この新米艦長の洞察力や思考の柔軟性一挙手一投足がすごいんですよね。でもやってることって後から俯瞰でみてみると「当たり前」のこと。
多分読み終わる頃にはこの著者「艦長マイケル・アブラショフ」に惚れてしまっていると思います。
僕は惚れました。
日本人だろうがアメリカ人だろうがリーダー術としてはすばらしいことばかり書かれているので是非一読して欲しいと思いますね。
企業に勤めるサラリーマンよこれを読め!と言いたくなります。
辞める理由はお金ではない
ブラック企業では長時間、低賃金で働かされる。こんな話がよくあると思うのですが、案外辞める理由に賃金というのは少ないと思います。
艦長マイケル・アブラショフは艦から退職するものになぜ辞めるのかを聞いて回るなどの調査を行うんですが、その中のトップ4の理由がこちらです。
第一の理由は「上司から大切に扱ってもらえないこと」だったのである。
第二は「積極的な行動を抑え込まれること」。
第三は「意見に耳を貸してもらえないこと」。
第四は「責任範囲を拡大してもらえないこと」であった。
そして五番目にやっと給料が低いという理由に行きつくわけです。
一位は上司から大切に扱ってもらえないこと。これは人間関係がうまくいっていないことを指すのでしょう。人はいつだって自分のことしか考えない動物です。他人の目線に立てない上司に良い上司はいません。
もっと自分からではなく俯瞰して部下を見ていく必要があります。
任せる。拘束しない。
厳しく管理することは、部下の才能や技能を引き出す最良の方法とは言えない。むしろ、束縛をゆるめただけ、すぐれた結果が出るのだと私は確信している。
これがわかったアブラショフは部下にこう言い続けます。
「きみが艦長だ」
かっこよすぎるぜ艦長!
これはスタッフが何かと艦長に指示を仰ぐ今までの仕事やり方を変えたかったのと、部下を信頼し認めることをやりたかったのだと思います。
スタッフの信頼を得るにはスタッフを信用することから始めなければなりません。そして束縛しない。日本人は特にミニマムマネジメントが好きです。部下の細かい仕事の先の先まで知りたがる上司は多いと思いますが、それは結局自分の管理能力が低いと言っているのと一緒です。
もちろん全てを最初から最後まで任せるのではなくどこまでの裁量を部下に与えるのか、そして人として信頼を置くのか。そこが上司としての技量だと思います。
他人の評価を自分の評価としない
艦長マイケル・アブラショフも間違いを起こします。
21歳のデイビットという部下が艦にやってきます。しかし、そのデイビットは艦の管理事務室から反抗的な態度をとるという評価を受けていた。
これを真に受けたアブラショフはその評価を真に受けて、何の期待もせずうず高く積まれた書類の管理を任せます。
それから間もなくアブラショフは自分の部屋に戻って驚きます。
乱雑に積まれていた書類の山がきれいに整理されて居たのです。
さらにある日デイビットに艦の管理事務室から追い出された理由を聞くと、単に「先輩たちに嫌われていた」という理由だったことに気づきます。
さらにその嫌われた理由が、仕事の効率と手順を改善する方法を提案したことにあったようなのです。
そこでアブラショフは
彼こそが私が求めていた人間、つまり「自主的に物を考える人間」だった。私は、先任の五人を飛び越して。彼を自分の第一補佐とした。
デイビットのおかげで、大いに助かったものである。私は彼の能力を最初から見抜けたわけではなかったが、この一件以降、人を評判や見かけだけで判断せず、その人が持つ適性を見抜けるよう細心の注意を払うことにした。
悪口はどこにでもあります。問題は悪口を言うことにもありますが、その悪口を飲み込みその本人と接することなく評価としてしまうところです。
この危ない考えをもってる人は多いです。上司として評価するならまず自分で関わりあってから評価しろ!と言いたいですね。
月見的(@tuki_mizu)見解
ほんの一部をさらっと紹介。僕の書評の特徴ですが、最初から最後まで一字一字を意識して読んでもらいたい一冊です。
艦長マイケル・アブラショフに惚れ、そして自分に活かしてください。
全てにおいて言えることは、人を知り、信頼することが上司として重要な努めだということです。
それでは、月見水太郎(@tuki_mizu)でした。